一般社団法人 放送サービス高度化推進協会(A-PAB)は、7月21日、「オンライン記者発表会」を開催し、新執行部の挨拶とともに、6月末までに新4K8K衛星放送の視聴可能機器が累計で477万台となり、前月に比べて36万5千台増加したことを明らかにしました。
記者発表会の冒頭、6月29日に就任した新執行部(理事長、専務理事、常務理事)の3人がそれぞれあいさつをしました。(以下、要旨を掲載)
相子理事長
福田前理事長の後任として、理事長に就任いたしました相子宏之でございます。新体制でのスタートとなり、至らぬ点、力不足の点など多々あるかと思いますが、どうぞご指導、ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
当協会の役割は、放送および放送に関連するサービスの高度化を推進し、関連の技術仕様の検討や検証・評価を行う、そしてテレビの技術基盤を用いた新たな産業、文化の創成に貢献し、公共の福祉の増進と国民生活の向上に資するというものです。「放送」は、日本人にとって欠かせない文化を発信してきており、今も発信し続けていると考えております。これから先も、放送が価値あるものであり続けるための一助となれるよう、当協会の事業ビジョンである「会員企業・団体が視聴者・ユーザーにより豊かな放送文化をお届けするために、そして、関係産業・関連企業の発展を通じて高度情報化社会の中で更なる貢献をしていくために」を推進すべく、さらなる進化をめざし、努力していく所存です。
お陰様で、今年度も、総務省より、「放送用周波数を有効活用する技術方策に関する調査検討」事業の受託が決定し、「衛星放送受信環境整備事業(中間周波数漏洩対策事業費補助事業)」についても交付決定頂きました。
また、2018年12月1日に放送を開始しました新4K8K衛星放送につきましては、家電店ではすでに「新4K8K衛星放送チューナー内蔵テレビ」がテレビ売り場のメインとして並び、価格も以前より手の届きやすいものになっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京オリンピック・パラリンピックも1年延期となり、販売台数の落ち込みなどが懸念されましたが、テレビ視聴時間の増加等の影響からか、順調に普及しつつあります。一層の普及拡大に向け、関係団体の皆様と連携、協力して取り組んでまいりますので、引き続き、ご支援、ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
阿部専務理事
このたび、専務理事・事務局長を拝命いたしました阿部浩二と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。NHKからの出向です。長く番組制作の現場におり、その後デジタルやインターネット関連の業務を経て、直近3年はメディア関連の業務を担当しておりました。そうした経験を生かしながら、職責をしっかりと果たし、さらなる「放送サービスの高度化」に寄与できるよう、最善を尽くしてまいる所存です。
放送と通信の本格的な融合が進むなど、放送をはじめとするメディアのありようが、大きく様変わりしつつあります。また新型コロナウイルスの出現という思いもしなかった出来事によって、放送が果たすべき社会的役割と機能が改めて問われる状況も生まれています。
こうした中、A-PABは、時代の変化に的確に対応しながら、放送サービスの高度化に資する業務のほか、技術規格のメンテナンス、ESやRMPの管理など、放送を支えるインフラの安定運用を継続的に実施してまいります。
特に、放送サービスの高度化の面では、2018年12月にスタートした「新4K8K衛星放送」の普及推進に向けて、引き続き周知広報に注力してまいります。そして2つの国費事業、①「電波漏洩対策の助成金」に関する補助事業を通じたBS左旋の受信設備普及と、②「地上TV放送高度化技術試験事務」を通じた地上放送高度化に関する技術検討について、会員各社および関係団体の皆様とともにしっかり取り組み、責務を着実に果たしてまいります。
笹尾常務理事
石田前常務理事の後任として常務理事に就任いたしました日本テレビの笹尾敬子と申します。主に周知広報を担当いたしますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
新型コロナウイルスの影響で、新4K8K放送推進の大きな原動力として期待されていた東京オリンピック・パラリンピックが来年に延期になり、イベントやセミナーの開催なども、今までと同じやり方ではできない状況が続いております。また、本日発表させていただきます市場調査でも新4K8Kの認知度が放送開始当初より下がっているという結果も出ています。
一方で、ステイホームの影響からか新4K8K衛星放送視聴可能機器は、順調な伸びを示しております。また、この12月には、BSデジタル放送開始20年、新4K8K衛星放送開始2周年の節目を迎えます。
今後ともウィズコロナの時代を的確にとらえて、できる限り積極的な周知広報を心がけて参りますので、皆さまのお知恵とお力添えのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
続いて木村政孝理事が、新4K8K衛星放送視聴可能機器の台数が大幅に伸びていることについての背景や、今後の普及見通し等について説明しました。
資料①を基に、今年6月末時点での新4K8K衛星放送受信機器の普及状況について説明させて頂きます。
【1】ですが、現時点で、新4K8K衛星放送受信機器市場にどのようなメーカーが 参入しているかをまとめております。(1)の新チューナー内蔵テレビについては、これからも新規参入が続くのではないかとみています。
【2】は、視聴可能機器台数の「6月分」と「6月末累計」をまとめたものです。
6月分としては、36.5万台で、6月末累計では476.7万台となりました。
【3】は、月別推移をグラフ化したものです。ご覧のように比較的順調に推移し、目標の一里塚として考えていた500万台が目前という所に来ています。
【4】は、最近の普及状況についての分析です。
コロナ禍により、普及にブレーキがかかるのではと懸念をしていましたが、6月単月では、前年20.7万台に対し、今年は、36.5万台と、1.8倍の伸び、4月から6月の四半期で見ても、前年14.7万台/月に対し、今年は27.4万台/月で、前年同期比1.9倍という大きな伸びとなりました。
好調の要因を分析しますと、「品揃えが増え、その結果として低価格化が進んだ」ほかに「4K衛星放送の魅力を評価して頂いた」ということもあると思いますが、コロナ対策としての「ステイホーム」の拡がりにより、家族揃ってのテレビ視聴時間が増えたことで、今までより大きな画面のテレビへの買い替えニーズが顕在化したことが大きかったのではないかと考えています。
数字面での裏付けですが、4月から6月の四半期では、テレビ全体の内、「50型以上」が、昨年は29.1万台なのに対し、今年は、41.2万台と、1.4倍になっており、テレビ全体に占める比率も前年の26%から今年は、35%となっています。
尚、記載していませんが、このテレビの買い換えを大いに促進したのは、お店の方の話では、やはり、国民1人あたり10万円の「特別定額給付金」の存在が大きかったということでした。
最後に、商品別にみますと、この好調な動きを支えているのは、全体の8割近くを占める「新チューナー内蔵テレビ」となっています。今後は「新チューナー内蔵録画機器」「ケーブルテレビ用のSTB」の更なる普及拡大を期待したいと考えています。
次に、2020年5月に実施した「第9回新4K8K衛星放送 市場調査」について、周知広報部の重森万紀部長が結果を説明しました。
A-PABでは、新4K8K衛星放送に関するWEB市場調査を定点実施しています。
2020年5月に行った最新の結果についてのポイントは、以下の通りです。
新4K8K衛星放送に関する認知や理解が、放送開始直後より減少傾向にあり、新しい放送の魅力の訴求が不足していることがわかりました。
一方で、新4K8K衛星放送の視聴時間は増え、満足度も上がっていることがわかりました。引き続き、周知広報に努めて参ります。
最後に、令和2年度「衛星放送用受信環境整備事業(中間周波数漏洩対策事業費補助事業)」の開始について4K8K推進センターの宇佐美雄司センター長が説明しました。
「電波漏洩対策の助成金」の申請受付を7月8日から開始いたしました。
今年度は、申請書類等の簡素化や受信設備の「システム系統図」の添付が不要になった他、複数枚必要だった書類を1つにまとめ、電子申請も準備中です。
さらに、どうしても交換できない機器があった場合の対策手法も整えました。
また、工事実績報告書の写真の撮り方や書類の簡素化を実現し、また、「助成金」の受け取りを電器店か申請者かを選択できるようになりました。
以上でA-PABからの報告は終了しました。
質疑応答は以下の通り
質問:
おうち時間の増加でテレビの需要が増加したということですが、東京オリンピックの延期に伴う影響はどうだったのでしょうか。
木村理事:
もともと7月末で500万台を目指していたので、ほぼ予定通りととらえています。
質問:
今後の需要の見通しと500万台の次の目標はどうなるのでしょうか。
木村理事:
私見ですが、これからの普及は、こうなるではなく、こうしたい、というタ-ゲット数値を述べさせていただきます。
来年7月末まで、これから1年以内にできる限り早く、500万台を普及させ、結果的に1,000 万台を達成したい。これは、世帯普及率では10数%となり、1,000万台普及すれば、民放として、CMスポンサーを動かすことが出来るようになるからです。それが、ピュア4K比率を更にアップする大きなきっかけにもなると信じています。
勿論、この1年は29万台弱/月だったので、あと1年間で500万台を更に普及させるには、今までの5割増しで普及を進めることになり、決して容易なことではありません。
しかし、現状テレビの買換需要は非常に底堅いものがあります。アナログ放送終了に際して2008年~2011年の4年間で、薄型テレビは約6,840万台も普及しました。2010年は2,500万台以上も売れました。今年の総務省調査では、買換サイクルは9.7年というデータも出ており、各家庭で、10年を経過したメインのテレビは、画面サイズの大型化ニーズをベースに、「これからまた10年使うのであれば、やっぱり4Kテレビですよね?来年7月には東京オリパラもあるし」ということを、きちんと訴求することを基本にこの1年間で1,000万台普及を次の目標としたく考えています。
質問:
現在のピュア4K番組の割合はどのくらいでしょうか。また、今後の見通しは?
笹尾常務:
BS民放各局へのヒアリングベースですが、2割前後と聞いています。ただし、特番期にはもう少し割合が高くなります。今後については、コロナの影響で、新しい番組の制作がストップしたり、4K8K番組に向いていると言われる花火大会、祭り、スポーツの大会が中止になったり縮小されたりしているため、新しい番組が作りづらい状況が続いていると聞いています。ただ、今年の12月にはBSデジタル放送開始20年、そして新4K8K衛星放送が開始して2年という節目でもあるので、新型コロナウイルスの状況を見ながらではありますが、年末年始の特番に向けて、どのようなことができるかを各局で積極的に考えていきたいということです。
質問:
相子新理事長にお聞きします。もともと右旋が2Kで左旋が4K8Kという話だったと思いますが、右旋において、FOXやD-LIFEが撤退し、さらに区画整理が行われることになるかと思いますが、今後、BSの右旋、左旋はどうなっていくのがよいと考えていますか。
相子理事長:
非常に難しい質問です。放送サービスの高度化を推進するA-PABとしては、右旋も左旋も含めて放送全体を盛り上げていくことを主眼にしています。その先に、電波の有効利用という観点から言いますと、できるだけ多くの方に、なおかつ、高度な放送サービスをお楽しみいただけるようにするということがあります。電波の利用のしかたについては、総務省さんが国の考えとしてまとめることとは思いますが、放送事業者にとって、視聴者のみなさんにとって望ましい形を一緒に考えていきたいと考えます。
阿部専務理事:
少し質問の趣旨と異なるかもしれませんが、先日の総務省衛星放送の未来像WGでも報告しましたが、現在の受信環境の実態を見ると、BS右旋の環境はかなり整っているものの、左旋の受信環境はまだまだ普及が進んでいないという現状が確認できました。一般の視聴者の皆さまからすると、4Kテレビを購入して新4K8K衛星放送を見ようとしたときに、そのチャンネルが右旋なのか左旋なのかということはわかりません。そのため、リモコンなどの操作版には左旋のチャンネル番号が入っているので、たとえば8Kチャンネルのボタンを押してみたら、映らないというようなことに、買ってみて初めて気づくという方も結構いらっしゃるのではないかと思います。こういう状況を鑑みて、左旋受信環境の普及は喫緊の課題だと捉えています。
今年度も引き続き、電波漏洩対策助成金補助事業を行うなかで、左旋の普及に貢献していきたいと思っています。また、受信環境を調査してみて、改めて、既存の集合住宅が課題であるとの認識を強くしました。しかし、最近では、全面改修ではなくて、部分改修という技術も開発されていますし、ケーブルテレビや光回線での視聴などのいろいろな選択肢も増えてきています。こういったことも含めて、理解促進、周知を図っていきたいと思います。
質問:
テレビの出荷・販売状況について、8Kテレビのデータはありますか。
木村理事:
8Kについては、まだJEITAさんが8Kテレビのデータを統計の中に取り込んでいないので、現在はお答えはできません。
質問:
衛星放送の未来像WGで日本ケーブル技術協会が言及されていた、プラスチック・オプティカル・ファイバーを使っての改修工事について、事例、件数などをA-PABとして把握していたら教えてもらえますか。
宇佐美4K8K推進センター長:
POFについては、現在のところ、導入にまで至っているとは聞いていません。しかし、改修の一番の課題であるコストについて、各メーカーさんが検討していると聞いています。POFは、非常に細くて、壁の中や複雑な個所でも通せる仕組みで、マンションまるごとではなく、一部の住人の居室から順次導入していくことができるという意味で有効な手法と考えますので、マンション管理業協会の皆さまと連携して周知活動を進めていきたいと考えています。
質問:
地上4K放送の検討状況について教えてください。
水谷技術統括部長:
地上4Kの技術検討について、A-PAB技術部が、総務省が主管する【放送用周波数を有効活用する技術方策に関する調査検討】周波数逼迫対策技術試験事務を受託し、昨年度から調査、検討をしています。昨年度は実験試験局等を設置し、地上4K放送、8K放送をどう実現していくかを検証するためのインフラ作りを行いました。今年度は、4カ年計画の2年目となり、それらの設備等を使い、より詳細な検討を行っていきたいと考えています。現在、総務省の仕様書から割り出した2020年度の検討項目を精査しているところです。