一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)は12月1日、BSによる4K・8K試験放送を開始し、千代田放送会館(東京・千代田区)で総務省幹部、会員、関係者ら約250人が参加して試験放送開始セレモニーを開催しました。
■主催者として挨拶に立ったA-PAB福田理事長は次のように述べました。
「本日は総務省をはじめ会員、関係者の方々にお集まりいただき、いよいよ4K・8Kの試験放送を開始する運びとなりました。今年8月1日にはNHKの試験放送がスタートしましたが、いよいよ民間放送事業者も加わり、2018年の本放送に向け大きな節目を迎えることになりました。この式典を機に、お互いが共通認識を持って今後に臨んでいただきたいと切に願うものであります。
BSによる4K・8K試験放送は、残念ながら一般のご家庭ではご覧になれませんが、2018年の本放送開始までに放送事業者には十分に体制を整えてもらうとともに、メーカーには、適正かつ十分な画質の受信機を開発していただくための準備を行うのが最大の目的です。
この間、A-PABといたしましては、受信機が十分に機能するかどうかを調べるテストセンター業務を実施するほか、本放送に向けての周知広報活動も強めて参りたいと思っております。 合わせて4K・8Kコンテンツの制作力の強化にも努めていかなければならないと考えております。
来年1月下旬にはコンテンツ制作に関するワークショップを開催する計画です。この機会を利用し、特にローカル局に制作について力量を高めていただきたいと考えております。
この2年間にハード・ソフトともに充実させ、周知広報も徹底させながら、2018年の本放送開始を迎えたいと思っております。
「4K・8K推進のためのロードマップ」によりますと、2020年の東京オリンピック・ パラリンピック競技大会時には、数多くの番組が4K・8Kで中継・放送され、一般の家庭においても、これを受信できる環境が整っていることが期待されています。この間、いかによいコンテンツを作り、いかによい受信機を開発するかがこれからの課題だろうと思います。関係の皆さんにはなお一層のご協力とご支援をお願いして、開会の挨拶とさせていただきます」
■引き続き、来賓として金子めぐみ総務大臣政務官が次のように挨拶しました。
「本年8月1日のNHKによる4K・8K試験放送開始に続きまして、A-PABの試験放送が本日から開始されます。いよいよ民間放送事業者の試験放送がスタートし大変重要な節目を迎えることとなりました。この試験放送を通じて民間放送事業者の皆様が、2018年のBSおよび東経110度CSによる4K・8K実用放送の実施に向け、必要な知見を蓄積されることを心から期待するところです。
総務省といたしましては、4K・8K推進のためのロードマップに沿って、9月から10月にかけて実用放送を行っていただく放送事業者の公募を実施させていただいたところ、10社から申請をいただきました。現在、来年初頭の事業認定を目指して鋭意審査を行っているところでございます。
また、この4K・8Kにつきましては、放送サービスの高度化、映像関連市場の活性化、関連産業分野の国際競争力の向上につながるものと期待をしております。2020年までの経済効果は36兆円になると試算があるなど、我が国の経済発展、経済成長に大きく寄与するものと考えております。このようなことを踏まえて、今年6月2日に閣議決定されました日本再興戦略2016では、政府の目標として2020年に全国の世帯の約50%で視聴されることを目指し、2018年の衛星放送における実用放送開始等、4K・8Kを推進することを謳っております。
思い起こせば地上放送のデジタル化に際しましては放送事業者や、受信機メーカーの皆様をはじめ、官民あげての取組みで円滑な移行を成し遂げたところでございます。4K・8Kの推進におきましても、国と、そして幅広い関係事業者、団体とが一体となって積極的な周知、そして広報等の活動を行いまして、国民運動として盛り上げていくことが重要だと考えております。
オリンピック・パラリンピック東京大会の成功に貢献する為にも、このような取組には放送サービス高度化推進協会をはじめとした、関係者のご理解ご協力が不可欠でございます。総務省と致しましても、精一杯皆様とともに取り組んでまいりますので、どうかより一層のご理解ご協力を賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。
■次に、日本放送協会 今井純専務理事が以下のように挨拶しました。
「本日はA-PABの理事としてご挨拶申し上げさせていただきます。NHKは、すでに今年の8月1日から4K・8K試験放送、NHKスーパーハイビジョンを開始いたしております。
8月6日からのリオデジャネイロオリンピックに合わせまして、2台の8K中継車を現地に送り、開会式や閉会式の他、柔道や競泳、陸上など5つの競技を8Kで制作をして放送いたしました。オリンピック期間中の放送時間は181時間に及び、このうち34時間45分を生中継で放送をいたしました。試験放送を受信できるテレビはまだ市販されておりませんが、リオデジャネイロオリンックの熱戦はNHKの全国各地の放送局と、6ヶ所のパブリックビューイングの会場で、約21万人の皆様に8Kならではの臨場感溢れる映像と音声でお楽しみいただきました。
本日からは、NHKに加えていよいよA-PABが試験放送を開始いたします。NHKと民放の2元体制というふうに言われますが、いよいよ4K8K放送においても、NHKと民放が揃って放送する環境が整うことになり、より多様なコンテンツが番組編成表に並ぶものと期待をしております。
2018年の実用放送に向けては、すでに放送事業社の募集が行われ、認定は年明けになるということでございますが、放送事業者といたしましては、この試験放送で得た知見を活かして、着実に準備を進めていかなければならないと考えております。また、受信機メーカーの皆さまには、試験放送やA-PABに設置したテストセンターを活用して、できるだけ早い時期に4K8Kテレビを市場に投入していただけますよう期待しているところでございます。
さらに、A-PABとしましては試験放送を通じて4K8K放送の魅力をできるだけ多くの視聴者の皆様にお伝えするとともに、今の4K対応テレビで4K8K放送を視聴するためにはどうすればよいのか等、視聴者の皆様に正確な情報をお伝えして理解を深めていただくことも重要な役割だと考えております。
本日は今年4月のA-PABの設立以来の大きな区切りでございます。NHKといたしましても4K8K放送の普及に向けて取り組んでいく所存でございます。引き続き、総務省様はじめ会員各社様には、ご支援ご協力の程、よろしくお願いを申し上げます」
■ 民間放送事業者を代表してTBSテレビ河合俊明常務取締役は次のように挨拶しました。
「テレビ放送の歴史にはカラー化ですとか、地デジ化という大きな節目がございました。
今回の4K・8Kの放送開始もひとつのマイルストーンになると思っております。
地デジ化の時はアナログからデジタルになるということと、SDがHDになることが同時に起こったことで非常に綺麗な映像になりました。また、デジタル化によりまして、EPGとかデータ放送といった新しいサービスの普及によって皆さんが慣れ親しんだと思っております。
今回の4K放送、画素が4倍になるということだけではなくて、HDRによってドラマの暗い部分ですとか、スタジアムの明るいところが綺麗に見えるようになります。また色域が広がることによってNHKさんの8Kのリオデジャネイロのカーニバルやオリンピックの閉会式の、あの鮮やかな色が再現できるようになります。また、フレームレートが上がることによって、ボールの動きなども細かく見ることができます。こうした新しい技術が合わさることによって普及が進むのではないかと思っております。
今日始まります試験放送は一年半後、18年の夏には終了となり、その後は実用放送というフェーズに入って参ります。わたくしたち民間放送事業社、在局キー局系のBS放送、またBS、CSで現在放送されている事業社の方も、新たに4K放送の免許の申請を現在行っているところでございます。正直申し上げて、4K放送、8K放送は当初はビジネス的になかなか厳しいところもあるかと思います。ただ、やはりこうして始める以上は、NHKさんと民間放送事業者が両輪となり、またメーカーさんが後輪となって進めていただくことによって、普及が進むと思っております。
また何より、ロードマップにございますように2020年の東京オリンピック・パラリンピックを国民の皆様が4K・8Kで楽しんでいただくために、総務省様はじめ、ここにいらっしゃる会員の皆様のご支援とご協力を賜ればと思っております」
■受信機メーカーを代表してソニー 株式会社 島田啓一郎執行役員コーポレートエグゼクティブは次のように挨拶しました。
「BSによる4K8Kの試験放送が今年8月NHKさんにより開始され、本日からはA-PABでも開始されるということは放送サービスの高度化において大きな節目であり、メーカーとして大変期待をしております。
この試験放送は、メーカー各社が開発・商品化を進めている受信機の技術検証に必要不可欠なものです。4K・8Kの放送サービスは、すでに124、128度のCS放送やケーブルテレビ、IPTVでは実用放送が開始されており、それらを直接受信できる、あるいはセットトップボックスを接続してお楽しみいただけるような4Kテレビは数多く市販されております。
今回の4K・8K試験放送は、ご家庭で視聴することはできません。BS・110度CSによる4K・8K放送は、2018年に実用放送が開始される予定ですが、現行の4Kテレビにはまだその受信機能は搭載されておりません。すなわち、受信機メーカー各社は、今回の試験放送を活用して、実用放送に向けての受信機の開発、商品化を進めていくことになります。
テレビの高画質化は2Kから4K、8Kへと順を追って確実に進化してまいります。今回の4K・8K放送は、解像度のアップや広色域化、フレームレートや階調のビット数の改善に加えて、この1、2年急速に話題になり技術の標準化が進展したHDR、ハイダイナミックレンジという画質の5つの要素をすべて持ち合わせたものです。4K・8Kによる、大画面、高精細、高画質な映像はお客様の人の視覚に近い、リアリティー豊かな映像体験と感動をもたらします。
すべての4K・8K放送を受信するためにはBS・110度CSアンテナや分配器、分波器、ブースターなどの受信機システムが右旋、左旋の両偏波に対応している必要があります。アンテナメーカー各社では、それら4K・8K対応機器をすでに一部は商品化しており、今後さらに対応を進めてまいります。
最後になりますが、メーカー各社は放送事業社、ケーブル事業社、通信事業社など、A-PABすべての会員の皆様と一緒になり、放送サービスの高度化に取り組んで参る所存ですので、引き続き、ご支援ご協力よろしくお願いいたします」
試験放送開始の午前10時00分に向けて出席者全員でカウントダウンを行い、放送開始を見守りました。最後にA-PAB石田常務理事より試験放送について概略を説明しセレモニーは終了となりました。
(注:試験放送については当ホームページの4K・8Kについて> 4K・8K どうすれば見られるの?> 4K・8Kサービス一覧> 試験放送 をご覧ください)